この記事を書いた人

日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定リウマチ医資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に整形外科の分野に力をいれており、2026年夏頃に東京都西部地域でクリニックを開業予定。

アキレス腱断裂の原因とは?運動中だけじゃない発症リスク

アキレス腱断裂は、かかとの後ろにある太い腱(アキレス腱)が、完全または一部切れてしまうケガです。
ジャンプや急な走り出し・ストップ、方向転換など、スポーツ中の動きが主な原因です。

でも実は、激しい運動をしていなくても起こることがあります。
例えば、加齢によって腱が硬くなっていたり、普段あまり運動していない人が突然体を動かした場合。また、ステロイド薬の使用や、以前アキレス腱炎を経験していた場合も、断裂しやすくなります。

アキレス腱断裂の前兆に気づける?

「いきなり切れた」という方が多いですが、中には前兆があったという声もあります。
たとえば、

  • ふくらはぎの張り
  • アキレス腱やかかとの軽い痛みや違和感

といった、ささいな症状が続いていたというケースも。
慢性的な疲労や炎症がたまっていると、断裂のリスクが高くなります。

断裂の瞬間には、「後ろから蹴られたような衝撃を感じた」「バチンと音がした」と訴える方が多く、そのタイミングで初めて異常に気づくこともあります。

アキレス腱断裂から歩けるまでにかかる期間

完全に切れていても、腱が少し残っていたり、周りの筋肉がかばってくれることで、「意外と歩ける」と感じる人もいます。
でも、ほとんどの方は以下のような症状が出ます:

  • ふくらはぎに力が入らない
  • つま先立ちやジャンプができない

治療方法によっても異なりますが、手術でも保存療法でも、再び歩けるようになるには6〜8週間ほどかかります。
スポーツなどに本格復帰するには、3〜6か月程度を見ておく必要があります。

アキレス腱断裂は自然治癒するのか?

完全に切れてしまったアキレス腱が、何もせずに元通りになることはほとんどありません。
放っておくと、腱が縮んだまま固まったり、歩行に支障が出たり、再断裂のリスクが高くなります。

軽い損傷や部分断裂であれば、固定などの保存療法で治ることもありますが、「そのうち治るだろう」と自己判断せず、早めに医療機関を受診することが大切です。

アキレス腱断裂の治療方法について

アキレス腱断裂の治療は、「保存療法」と「手術療法」の2つがあります。

保存療法

足首を下に向けた状態でギプスや装具で固定し、腱が自然にくっつくのを待ちます。

手術療法

切れた腱の両端を縫い合わせて治します。
再断裂のリスクが比較的低いと言われています。

どちらを選ぶかは、年齢や運動レベル、再発のリスク、過去のケガなどを考慮し、整形外科の医師と相談して決めていきます。

アキレス腱断裂の手術とその後の経過

一般的な手術は、切れたアキレス腱を縫い合わせる「縫合術」です。
最近では、皮膚の切開を最小限に抑えた、体に負担の少ない手術も増えています。

  • 手術時間:約1時間
  • 入院期間:2〜5日程度

術後はしばらく足を固定し、リハビリを段階的に進めていきます。
早めに適切な治療を行うことで、再断裂を防ぎながら、しっかりと機能を回復させることができます。

アキレス腱断裂のリハビリはいつから始める?

手術や装具による固定が終わったら、リハビリが始まります。
はじめは関節を動かさずに筋力を保つトレーニングからスタートし、

  • 関節の動きを回復させる
  • 筋力を強くする
  • 歩行訓練やバランスの練習

というように、段階を追って進めていきます。

リハビリは、腱の回復だけでなく、再発予防や日常生活への早期復帰にもとても重要です。
医師や理学療法士の指導のもと、焦らずじっくり続けていくことが大切です。

アキレス腱断裂を予防するには?

突然の断裂を防ぐためには、ふくらはぎやアキレス腱の柔軟性を保つことがとても重要です。

  • 運動前後のストレッチやウォーミングアップ
  • 疲れているときは無理せず休む
  • 過去にアキレス腱炎や断裂を経験した人はトレーニング内容の見直しや定期的な受診も◎

特にスポーツをしている方や、久しぶりに運動をする方は、しっかりと準備してから体を動かすようにしましょう。

アキレス腱断裂は、適切な治療とリハビリによって日常生活やスポーツへの復帰が十分に可能です。
一方で、放置や自己判断によって回復が長引くこともあります。
気になる症状がある方は、早めに整形外科を受診し、適切な診断と対応を受けるようにしましょう。

院長からのひとこと

アキレス腱断裂は、「まさか自分が…」という場面で突然起こることがあります。
特に、運動不足の方が急に身体を動かしたときや、ふくらはぎの違和感を我慢して運動を続けていた方に多く見られます。

断裂してしまっても、早期に適切な治療とリハビリを受けることで、しっかりと回復することが可能です。
当院では、患者さん一人ひとりの生活スタイルやご希望に合わせた治療法をご提案し、術後のリハビリまで一貫してサポートしております。
気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。

関連リンク

  • 当院の整形外科診療について
  • 手術を受ける方へ(手術説明・入院の流れ)
  • リハビリテーション科のご案内
  • よくあるスポーツ外傷・障害一覧

よくあるご質問

Q
アキレス腱が切れても歩けるのですが、治療は必要ですか?
A

はい。歩けていてもアキレス腱が部分的または完全に断裂している可能性があります。
特に「つま先立ちができない」「ジャンプできない」場合は早めの受診をおすすめします。

Q
手術は怖いのですが、保存療法でも治りますか?
A

部分断裂や活動量が少ない方であれば、保存療法で十分に回復できることもあります。
状態や生活スタイルに応じて最適な治療方法をご提案いたします。

Q
リハビリはどれくらい続ける必要がありますか?
A

個人差はありますが、歩行の安定には約2か月、スポーツ復帰には3〜6か月を目安にリハビリを継続していきます。
当院では理学療法士が丁寧にサポートいたします。

Q
予防のために自宅でできることはありますか?
A

はい。運動前後のストレッチや、ふくらはぎのマッサージ、日頃から軽い運動を継続することが効果的です。
ご希望があれば、セルフケアの方法もお伝えいたします。

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