この記事を書いた人

日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定リウマチ医資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に整形外科の分野に力をいれており、2026年夏頃に東京都西部地域でクリニックを開業予定。
石灰沈着性腱板炎とは?
石灰沈着性腱板炎は、肩の腱板という部分に「リン酸カルシウム」という石灰が沈着し、急に強い痛みを引き起こす病気です。
特に40〜60歳代の女性に多く、夜間に突然発症することも珍しくありません。
- 肩の中に石灰がたまって炎症を起こす
- 痛みで肩が全く動かせなくなることもある
- 発症のきっかけがなく突然起こることが多い
→強い痛みや動かせない状態があるときは、早めに受診することが大切です。
主な症状
突然、激しい肩の痛みを感じ、肩を動かせなくなります。
夜中に痛みで目が覚めることも多く、睡眠障害につながることもあります。
- 肩の強い痛み(じっとしていても痛い)
- 肩を動かせない、腕が上がらない
- 夜間の激しい痛みで眠れない
- 痛みが数日〜数週間続くことがある
→「急に肩が痛くなって動かせない」時は、この病気の可能性があります。
原因
石灰がなぜ沈着するかは、まだはっきりわかっていません。
ただし、脱水や血流の低下、加齢に伴う腱の変化が関係していると考えられています。
- 石灰の沈着が炎症を引き起こす
- 水分不足や血流不良が関係している可能性
- 加齢や体質による腱の変化も影響
→はっきりした予防方法はありませんが、水分補給や生活習慣の改善が有効かもしれません。
治療法
多くは自然に石灰が吸収されて痛みが和らぎますが、強い痛みがある時は早めに治療した方が楽になります。
【保存療法】
- 消炎鎮痛剤(内服薬や湿布)
- 安静、三角巾で腕を固定
【医療機関での治療】
- 局所麻酔薬やステロイドの注射
- 針で石灰を吸引する治療(洗浄療法)
- 石灰が固まっている場合は手術で摘出
→痛みが落ち着いたら、リハビリで肩を動かし、関節の固まりを防ぎます。
放っておくとどうなる?
石灰は時間とともに吸収されることが多いですが、放置すると肩の動きが悪くなり「凍結肩(五十肩)」のように固まることがあります。
- 自然に治ることもあるが時間がかかる
- 痛みで肩を使わないと動きが悪くなる
- 慢性化して可動域制限が残ることもある
→痛みを我慢せず、早めの治療とリハビリが重要です。
院長からのひとこと
石灰沈着性腱板炎は、ある日突然、耐えられないほどの痛みで始まることがあります。
「一晩中眠れないほど痛い」という方も多いです。
今は注射など、痛みを早く取る方法がありますので、無理せず整形外科にご相談ください。
関連リンク
- 注射治療について
- 当院でのリハビリテーションについて
よくあるご質問
いいえ。多くは自然に吸収されます。痛みが強い時に治療を行います。
あります。同じ肩や反対側の肩にできることもあります。
急性期は冷やした方が楽です。痛みが落ち着いたら温めて血流を良くしましょう。
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